怖いという感情は自分を守る大切なセンサー
念願の免許を取得していざ公道へ出たものの、「スピードが怖くて体が固まってしまう」「エンストして後ろの車に迷惑をかけたらどうしよう」と不安に押しつぶされそうになる。
あるいは、数十年ぶりにバイクに戻ってきたリターンライダーが、昔のような感覚で走れず、体力や反射神経の衰えに愕然として恐怖を感じる。
このようなバイクへの恐怖心は、多くのライダーが一度は通る道です。
決して恥ずかしいことではありませんし、向いていないからとすぐに諦める必要もありません。
むしろその感情は、無謀な運転を避けるための防衛本能が正常に働いている証拠です。
大切なのは、その恐怖心が何から来ているのかを冷静に考える必要があります。
立ちゴケへの不安なのか、スピードへの恐怖、それとも他車との混走なのか。
原因を特定することで、解決への糸口が見えてきます。
自信を取り戻すための練習場所と技術的なアプローチ
公道に出る前のサンクチュアリ(聖域)を見つける
恐怖心の大部分は、操作への自信のなさと周囲の交通状況への気遣いが同時に襲ってくることです。
まずは、他車を気にせず操作だけに集中できる環境を確保しましょう。
教習所を卒業したばかりであっても、各都道府県の交通教育センターや教習所が開催しているペーパードライバー講習やライディングスクールに参加するのは非常に有効な手段です。
公道ではないクローズドなコースで、インストラクターの指導のもと、急ブレーキや低速バランスを再確認することで、「バイクはこうすれば止まる」「こうすれば倒れない」という物理的な信頼関係をマシンと築き直すことができます。
また、近所の練習場所としては、早朝の工業団地や、車の少ない河川敷沿いの道などが適しています。
交通量の多い幹線道路を避けるルート選びをするだけでも、心の余裕は大きく変わります。
視線は遠くに向ける
技術面で恐怖心を和らげる最大のコツは、視線と下半身です。
人間は怖いと感じると、どうしても視線が足元や目の前の路面に落ちてしまいます。
しかし、バイクは見た方向へ進む乗り物です。
視線が下がると平衡感覚が乱れ、フラつきの原因となり、それがさらなる恐怖を呼びます。
意識して顎を上げ、数台前の車や、カーブの出口など遠くを見るようにするだけで、驚くほど車体は安定します。
また、タンクを膝で挟むニーグリップを意識してください。
上半身の力を抜き、下半身で車体をホールドすることで、バイクとの一体感が生まれ、乗せられている感覚から操っている感覚へと変化していきます。
メンタルを整える
誰かと比べずに自分のペースを守る
メンタル面での克服法としておすすめしたいのが、あえてソロツーリングから始めることです。
ベテランの友人と走るマスツーリングは、一見安心なようでいて、初心者には「ペースを合わせなければならない」という無言のプレッシャーがかかります。
待たせてはいけないと焦って無理な運転をしてしまい、ヒヤリとした経験を持つ人は少なくありません。
一人のときは、誰に気兼ねすることなく、怖いと思ったらすぐに路肩に停まって休憩できますし、スピードを落としてゆっくり走ることも自由です。
「今日は近所のコンビニまで」「次は隣町の道の駅まで」と、小さな目標をクリアしていくことで、少しずつ成功体験を積み重ねていくのが遠回りのようで一番の近道です。
プロテクターは心の鎧
最後に、装備の力も侮れません。
胸部、肘、膝、脊椎にしっかりとしたプロテクターが入ったウェアを身につけることは、物理的な安全性はもちろん、守られているという心理的な安心感を与えてくれます。
万が一転んでも、大きな怪我にはならないという余裕が、身体の余計な力みを消し、スムーズな操作につながります。
恐怖心は、経験と技術で必ずコントロールできるようになります。
焦らずゆっくりと、バイクとの対話を楽しんでください。



